「ルパン三世 PART6」EPISODE 0 -時代-


変わりゆく時代の中で、次元という男は変わらない


さらば次元。今季の個人的な注目アニメの一つ「ルパン三世 PART 6」。その初回放送「EPISODE 0 -時代-」が先ほど(10月9日深夜)に放送された。「ルパン三世 PART 6」はルパンシリーズTVアニメ放送50周年を記念し、制作されたメモリアルなシリーズとなる。そしてその第一回放送はただの“第一話”ではないのだ。


この放送回を機にアニメ放送当時から次元大介役を50年間(!)演じ続けてきた声優・小林清志さんが次元役を降板した。生まれた時から次元の声はずっと小林清志さんの次元である。


そんな小林清志さん次元の最終回となる放送では、次元大介を大フィーチャー。ルパンと次元の信頼関係がルパンシリーズらしい軽妙なタッチで描かれた。


作中、銭形は言う


「お前ほどの男が、なぜルパンと一緒にいるんだ?」


ラスト直前にも、油断する部下を前に、次元を侮るなと釘を刺し、


「次元大輔とはそういう男だ」


と言い放つ。ライバルである銭形も次元の影の立役者としての実力を認めていたのだ。


さらに、珍しく不二子との2ショットも。


「ルパンにこれほど長く付いているのはあなたくらいのものよ」


と、次元の実力を認め、パートナーにならないかと持ちかける。


「イイ女なのは認めるが、それは天地がひっくり返ってもありえねえ」


と笑う。


「あなたにそんな風に言ってもらえるなんて天地がひっくり返ったかもね。あなたと飲むお酒もたまにはイイわね」


不二子はシャンパンを傾けながら、次元にそう告げた。もちろんビジネスとしての話であって男女の話ではないのだが、二人らしい大人な雰囲気漂う絶妙な掛け合いを見せてくれた。

また、ルパンは五右ェ門との押し問答の中で、


「次元だけは変わらずに受け入れ続けてくれた」


と普段口にしない感謝の言葉を口にした。

そしてルパンとのラストシーン、「上等な酒を一緒に飲もう」と口約束した次元を労い、


「あんまり無茶するなよ」


と不敵に笑えば、次元も


「お前こそ抜け駆けするんじゃないぞ。その酒、先に飲んだら許さないからな」


と返す。

ルパンは笑顔で去っていく。次元とこの先で落ち合う約束をした上で。その約束を繋ぎ止めるのはルパンが宝よりも大事に抱えた上等な酒と、長年築きあげてきた信頼関係である。


次元は、


「ルパンといると楽しいから」


と長年連れ添ってきた理由をこのエピソードで言葉少なく話している。なんというかこの距離感、バディとして完成されている。お互いに何を言わずとも互いを理解している。二人にとって言葉など野暮なのだ。


いつも通りのドタバタ劇の中で、キャストのセリフ一つ一つが、小林清志さん演じる次元に別れを告げているかのような、一抹の寂しさを感じる回だった。

来週から次元を演じるのは大塚明夫さん。その交代発表の際


「ルパンは俺にとって一生ものの仕事であった。命をかけてきた。我儘を言えば90歳までやっていたかったが残念。何とかかじりついていたかったが無理だった」


と語り、後任の大塚明夫さんには「あとは明夫ちゃんに委ねます。頑張ってちょうだい」とバトンを託した。


小さい頃から憧れだったニヒルな次元と陽気なルパンのコンビ。僕にもそんなバディや仲間と言える存在が少ないながらも存在する。そいつらの顔を思い浮かべながら、次元さながらにスコッチを注ぎ、小林清志さんの次元に僕は別れを告げた。


さらば次元。時代は変わっても、次元大介という男は変わらない。小林清志さん、長年の次元役、お疲れ様でした。